石内都「mother's」の完成形、
東京都写真美術館で開催中

石内さんは会場のレイアウトを頭に入れ、事前に何度も作品の並びをシミュレートするという。最終的に展示の時、ポイントとなる作品(この大きな赤い着物の写真など)を置き、現場でイメージを完成させていくのだ
オススメの写真展が9/23(土)から11/5(日)まで、東京都写真美術館で開かれている。石内都の「mother's」だ。
展示室に一歩、入ると広い空間の壁面に、大小さまざまな作品が余裕を持った間隔で並べられている。現代アートに馴染みのない人には、一瞬、拍子抜けする光景かもしれない。「こんな広いスペースに、これだけの作品しかないの?」と。しかし一点一点を見つめていくうちに、作品が心に直接語りかけ、そのイメージが感情を揺さぶり始めるに違いない。
開催前日に開かれた記者会見で作者は説明した。
「まず、大きなプリントは離れて、小さな作品は近寄って見てほしい。そうやってこの空間を歩いて、空間を感じてほしい」
気がつくと、広かったはずの空間にすっぽり包まれているはず。それが日常にはないギャラリースペースを使って行う写真展の魅力のひとつなのだ。
この作品は、石内さんが亡くなった母の遺品と、亡くなる少し前に撮りはじめた母の身体で構成している。使いかけの口紅や眉墨、シュミーズやガードル…。
「誰も着ない、誰も使わないそれらのモノから、強い喪失感を感じた」
母を亡くした2年後に初めてこのシリーズを発表し、以来、作品の完成度を高めながら6度目の展示となる。前回発表したのは昨年、イタリアで開かれた『第51回ヴェネチア・ビエンナーレ』日本館でだった。
「母との関係は実際、良いものではなかった。私にとってこの作品は、彼女との関係を見つめなおすことでもあった。ヴェネチアではそうした情報を知って足を運んでくれる女性が多く、会場で私に気づくと必ず質問をしてきてくれた。母と娘の関係性は世界共通の問題なんだと改めて思った」
ヴェネチア・ビエンナーレは100年以上続く、世界でもっとも歴史のある国際美術展で、第51回は154日間の会期中に915,000人の来場者を集めた。日本館だけでも129,602人の入館者があったという。ちなみに日本の出展は過去25回あるが、写真家の選出は篠山紀信さんと畠山直哉さんに続いて3人目だ。
「ヴェネチアに展示したことで、作品が良い意味で自分から離れていくのを感じた」という。自分と母の物語から、普遍的な母と娘の物語に進化したのだろう。今回の展示は、ヴェネチアでの展示に新作を加え、再構成した。「これが完全版であり、これがmother'sの完成形です」と石内さん。会場でしばし、母と娘の物語に身を委ねてみないか?

写真左:記者会見での石内さん(右)と、東京都写真美術館の笠原美智子さん。笠原さんは第51回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館のコミッショナーも担当した
写真右:会場では映像作品も上映されている
入場料:一般700円 学生600円 中高生500円
開館時間:10:00〜18:00(木・金曜は〜20:00)
※入館は閉館30分前まで。
■記念講演会
10/1(日)15:00〜17:00 1階ホールで開催
講師:石内都、鷲田清一(大阪大学大学院文学研究科教授)、笠原美智子(東京都写真美術館事業企画課長)
定員は先着順190名(こちらの聴講は無料)
東京都写真美術館
http://www.syabi.com/
| 固定リンク



コメント